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2022年12月7日水曜日

WCカタール大会がもたらしたもの(侍ブルー:11月23日→12月6日)

 森安監督は現役の時、カタールでのアジア予選の最終試合で日本がイランに逆転負けしてWCへの出場を逃し、有名な言葉「ドーハの悲劇」が頭の中に秘められていたそうだ。悲劇が歓喜に代わることを夢見て、26人のプレイヤー(19人は初出場、経験者は7人)を引き連れてカタールに。日本全土が熱狂的なサッカー聖地にかわったような、とにかく、コロナを吹き飛ばす勢いの声援の怒涛が押し寄せた2週間であった。

一次リーグ戦では初戦相手が強豪ドイツ。2戦目はランキングが日本(24位)より下のコスタリカ。そして最終戦がスペインであった。何と何と、日本は強豪ドイツを2-1で下し、コスタリカには予想外の結果で0-1、そして最後の対スペイン戦ではドイツと同じく2-1で勝ち、E組一位で決勝トーナメントに進んだのである。強豪のいるE組に組まれたことで内心皆、無理だとの予感がしていたに違いない。それが、初戦ドイツを倒したことで、日本全土はサッカー応援の大きな渦が巻き起こった。これは行けるかも。初出場の選手たちがベテラン先輩と並び、切磋琢磨してぐいぐい伸び伸びとやっている雰囲気があった。凄いというしかない。深夜、未明をものともせず、私はテレビに喰いつき、手を叩き、興奮しながら応援した。夫もしかり。サッカーは魔物。どんなこだわりも、躊躇もなく、純粋に歓喜の渦に巻き込まれて行く。知らない人とハグし、手に手を取り合って喜び合う。我が家でも傘寿を越えた二人が、若々しく、歓喜の声を叫んでハグした。冷静に思うと、サッカー競技は同じルールの下で、誰でも、どんな人でも、どんな環境でも、ボールを蹴りあい、頑張れば上へと登れる。世界中の若者が、可能性を秘めているのである。今や、ブラジルのネイマール、アルゼンチンのメッシ、ポルトガルのロナウドなど、名選手が億万長者になっている。サッカーは多様性社会の中でのポテンシャリティーのある夢を与えていることを改めて感じた。日本選手の未来は明るい。今回、一次リーグ戦で見せてくれた若い選手では三苫、伊藤、田中、鎌田、が目に留まった。安堂、浅野、前田、谷口、そしてキーパー権藤も凄い。コスタリカには何故か負けてしまったが、対スペイン戦で対ドイツ戦を再現してくれた。とにかく、ウキウキする寝不足を享受しながらの一次リーグであった。そして、決勝トーナメントに入って、対クロアチア戦も素晴らしい試合をしてくれた。五分五分の闘い。延長までして0-0のスコア。しかし、あのPK合戦は腑に落ちない。揃って球を拒まれてしまって負けてしまった。実力の差が、PKで出るとは。。。しかし、今となれば、侍ブルーがこれほどの歓喜をもたらしてくれたこと、そして、世界に通じる強さを見せてくれたことに感謝したい。本当にありがとう。


カタール2022のマスコット、La'eeb(超一流選手の意)はお顔が日本人的で実に可愛らしい。


第103回日光清風塾講話会 12月4日(日)

 12月4日(日)日光清風塾第103回講話会

11月は多忙なスケジュールがあるため、11月の講話会は本来お休み月となる12月の第一日曜日に延期。そして、講師は奥日光の洛山晃 小島屋の主人、小島喜美男様郷土史研究家にお願いした。来春にはG7の分科会「女性活躍担当大臣会合」が奥日光で開かれる。それに関連して10月の第102回目には塾長がそれをテーマに講話した。今回はその延長上を視野に、明治4年まで女人禁制であった奥日光における人物像を年代順にお話いただいた。奥日光には随分秘めた人物がいることが見えてきたお話であった。中でも、今回ドイツ人女医の存在については、事前に資料を入手していたので、私は理解していたが、講話会でもこの女性の話をもっとしていただきたかったのが本音である。小島氏が実在した彼女をモデルに劇シナリオを創作されているので、ここにその私の読後感を書いておこう。そして今回の講話でのお話は時系列に図式化しておきたいと思う。

「いのちのゆくえ」 <なつかしの中禅寺>     作・構成 小島喜美男           

 昭和の戦中そして戦後               令和三年十月

    やまの湖水のほとり

     愛犬二匹をいつくしんだ

      ドイツ人女医      

 タイトルに惹かれて一気に読んだ。 

史実に基づいたストーリーが昭和30年当時を現実の舞台に設定し、そこから145年前に遡っての史実を再現しながら進む。中心人物であるドイツ人女性医師ベッカの物語が、そのコミュニティーの中での人物像から彼女の哲学、人生論が深堀りされていき、当時の奥日光の様子が巧みに再現されている。とくに12頁の中禅寺役僧菅原裕景とベッカ女医との宗教論のやりとりは、中禅寺湖の風景を背景に、強く、かつ、情緒的に美しい流れとなって響いてくる。日本人僧侶の自然観、浄土観念、静寂の中の孤独な観念の中で、悟りを激しく追求する心の葛藤をベッカは良く理解している。西洋の一信教であるキリスト教にも東洋に近い思いがある。中禅寺の自然をこよなく愛したドイツ人のベッカ女医は最後には命は不滅だと言い切っている。

 アック(アキレス)とヘクター(ヘエクトル)という二匹の愛犬との密な生活の様子が巧みに描かれていて、それだけに、敗戦後に母国に帰らざるを得なかった時の愛犬との悲劇的別れは胸を打たれる。彼女の願いは二匹の愛犬の間に葬られて死後の世界を一緒に歩むことだったという。政治的に、彼女にはスパイ容疑もあったようだが、14年間、戦中と戦後を全身全霊を注いで中禅寺を愛し、女医として地元民を助け、優しいと慕われながら生きた一外国人の物語。彼女の心は中禅寺のどこかに漂って生きているような気がしてならない。

  シナリオ作品には当時の人物、建物の写真のみならず、沢山の浄土の世界を思わせるような、神秘的で美しい中禅寺界隈の写真が載せられている。これらも小島氏が実際に撮られたものであろう。実に美しい中禅寺風景である。作者自身がイメージ配役をリストアップされていることから、このシナリオ作品が本当の舞台で再現されることを願ってやまない。

                  107日      慶子の感想