今回のテーマは「南京の大学生から見えた今の中国」
5月7日から二か月間、南京市の南広学院(The university of international communication of China in Nanking)に於いて教鞭を取り、帰国したばかりの塾長が映像を駆使しての講話会。会場からまず意見を聞き、提出された以下のような問題点を念頭に置きながら今回の南京での経験を踏まえての話は大変興味深いものであった。
①大学生と一般市民とのギャップ
②歴史認識の問題
③共産主義と教育
④日本への関心
⑤彼等が抱える問題
今まさに、難しい日中関係の真っ只中にありながらも、塾長が大学側から快く受け入れられ、学生達が塾長の講義から熱心に学ぼうとしてくれたこと、又、彼らと仲良くやれたことにむしろ塾長自身が感激し、感謝しているということが述べられた。二か月間の経験談と映像を通して、最後に上記の点についての総括がなされた。
①中国の学生達は非常に良く勉強をし、中国の今の状況をよく理解している。中国が多くの国から嫌われているということや、インド、日本、フィリピン等と領土問題で対立していることも周知している。日本の大学生以上に携帯で世界の情報を把握し、日本の状況も良く知っている。中国の学生達は日本の政治の弱体化を知り、日本の電子産業が何故衰退しているのかとまで質問してくる。また、日本の自衛隊の演習が連日のように報道されていて日本の軍事力は強力だと理解している。経済的にも恵まれた家庭の子弟である学生達の知的教育環境がある一方で、人口の大部分を占める一般市民はまだ別の環境にあり、そのギャップは大きい。
②若い日本人は近代史を余り勉強していない。中国のテレビは、連日抗日戦争の番組や、「日本の野心」という報道番組を長時間流している。安部政権の動きなどをフォローしている。
③日本以上に資本主義国家かもしれない。中国を共産主義国家と定義づけるのは簡単すぎる。彼らにとって、日本は目標ではなく、弱肉強食、自由競争のアメリカのような社会を望んでいる。
④塾長自身が南京の大学で歓迎され、大事にして貰えたことには大変感謝しているが、残念ながら、日本に対する関心は薄れてきている。塾長はかたことの中国をしゃべる度に、韓国人かと尋ねられたという。一人も日本人か?と言って来た人はいなかった。日本人ですかと尋ねたくないのかもしれない。韓国への関心は非常に高まっている。韓国製の携帯がその象徴。日本語専攻の学生にとっては、日本の小説、美しい風景といったことに関心を寄せているのに対して、英語専攻の学生はアメリカを目指し、ビジネス志向が強い。
⑤中国は豊かになり、次には物作りだけでなく、中国人自身が革新的技術を産まなくてはならないと彼ら自身が考えている。将来のアジアについては大きな夢を持っている。素晴らしい未来があり、今世紀中に必ず繁栄を手に入れるという確信がある。そのためには平和が必要とも言っている。しかしながら、その豊かさは自分たちの手には届かないとも言う。就職難、環境汚染、健康保険制度の不備、住宅も手に入れるのは難しい等、沢山の悩み、問題を抱えているようだ。
今回の経験を通して、今後も、中国との人的関係を育てることはいくらでも出来るという確信を持ったということ、彼らは大きなエネルギーを発揮しつつあるということ、今や携帯などに代表されるように、技術的には韓国への関心が高いということ、英語熱の高さはアメリカを向いているということなど、中国へのイメージを新たにし、新しい認識で中国と付き合っていくべきでなかいかというメッセージを感じた。自由競争の社会、弱肉強食の社会はアメリカと並ぶくらい中国にあるという視点は衝撃的であった。
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