昨年1月より日本でも騒がれ始めたCOVID19の感染がここまで長引くとは誰も想像しなかった。2020年3月13日に特別措置法が成立して、第一回目の緊急事態宣言が4月7日に発出された。5月25日解除。第二回目が2021年1月8日に発出され3月21日まで続く。更に第三回目が4月25日から始まって、延期を経て5月31日に解除された。 発出、解除を繰り返すこと三度。東京オリンピックを開催するか、中止するか、IOCは様子見をする。ワクチン接種頼りの日本政府の決断も遅い。しかし、ウイルスは容赦ない。変異型ウイルスは変容してイギリス型が加わり、今や感染力の強いインド型に発展して、感染者数が増加し始め、ついに第四回目の緊急事態宣言が7月12日に発出されることになった。期限は8月22日までという。7月23日には東京オリンピックの開会式が行われる。緊急事態宣言下でのオリンピック開催となる。最初から東京オリンピックは決行すると決めていた政府は、開催の形をどうするかで困窮。人数を制限して有観客とするか、無観客とするか。結局、五者会談で東京、埼玉、千葉、神奈川の全会場は無観客ということが昨日決定された。
最悪の形になった。映像を通して競技の成り行きを観戦するだけでは、本当に東京で開催する意味は全く見えない。ここで、私達夫婦のメールでのやりとりを記述しておくことにした。
夫のメッセージ
東京オリンピックから世界へのメッセージ
今週水曜日に中国の大学生約100人向けにオンラインでの講演を行った。東京オリンピックについて話して欲しいとのことだった。来年の北京での冬季オリンピックもあって、中国での関心は高い。学生達からは、開会式はどのようにやるのか、とか東京オリンピックはこれまでのオリンピックとどのように違ったものになるのか、とか高い期待が示される一方、ある種の疑問も提起された。日本ではいまだウィルス感染が深刻なのにオリンピックを開催する日本の狙いは何なのか。これは日本がどのような国威発揚を狙っているのか、ともとれる質問であるが、私は「今や世界中が未曽有のウィルス感染禍にある中で、平和の祭典であるオリンピックをしっかりと開催して、世界に勇気を与えることが日本の狙いです」と答えた。
ところが、その翌日、東京には再度、緊急事態宣言が発令されることになり、開会式も無観客で執り行われることになってしまった。このようなオリンピックで、どのようにして世界に勇気を与えることが出来るのであろうか。このようになってしまった原因の一つは他の先進国に比べても我が国ではワクチン接種が進んでいないことである。他の先進国では多くの観客を入れたスポーツイヴェントが開催されている。ワクチンの他にも、国内の危機対応の緩さ、行政能力の不足等真剣に見直されねばならない問題は多い。
しかしこれらは時間を要する問題である。ともかく目前の課題は、東京オリンピックから世界に発出されるメッセージである。外国人観客だけでなく日本人観客もいない興奮のない開会式からどのような勇気を与えるのか。頼れるのは映像のみである。私の中国での教え子の一人はオリンピック放送機構に採用されて来週日本に来る。是非頑張って欲しい。実況放送では、選手達の戦いだけでなく、選手たちの達成感と連帯感が伝わるようにしてほしい。また、あらゆる方法を駆使して人類社会の平和の祭典であること、平和の大切さが世界に強いメッセージとして伝わる映像作りをして欲しい。これがまた、古代ギリシャの体育祭の狙いであった。
私からのメッセージ
観客の響めきや感動を乗せないで、競技の場面だけが放送、映像のみを通して世界に発信されるだけでは平和の祭典の意義が伝わらない。競技の一部始終を流すだけではなく、アスリート達の息吹、感動、連帯感をいかに、伝えるかが問われる。競技場の雰囲気を如何に作り上げ、アスリート達の情熱、メッセージを如何に伝えるか、放送機構に携わる人達の知恵と技術を期待したいですね。 2021年7月9日夕