第42回日光清風塾講話会要旨 6月28日(日)
『農業から始まるイノベーション』講師:手塚博志理事、栃木県農業法人会会長
T&Tナーサリー代表取締役
1950年には7000万であった人口は2008年には倍増してピークになり、その後下りジェットコースターの如く減少。最悪のシナリオでは2100年には江戸時代の人口に戻るであろうと言われている。
一方、今やAIの開発と進歩はめざましく10年後でさえ全く別の世界が予想される。
農業がかかえる問題は・農業人口減少・TPPにより農産物のグローバル化・農村秩序の崩壊・国土保全管理の不可能・食糧生産の喪失などであるが、しかし、AIの開発により農業生産性の向上が図られ、農業が飛躍的に成長するであろう。むしろ農林業が日本を救うであろうし、これからの新たな世界を造ると言いたい。これら問題の根本的な解決策は食糧の栄養と地域性を考えた価値化を生み出すことである。
オランダ、イスラエルの例を紹介。農業環境が悪いのに何故農産物が育つのか。1980年頃までは日本の生産力の方が高かったが、今やオランダはトマトの生産高が3倍に。アメリカに次いで世界第二位の農産物輸出国である。栽培技術としては世界第一位であり、農業技術大国となっている。日本も研究では高度な成果を出しているが、学者をつくり、博士号を取ったら終わりでなかなか現場に還元することをしていない。オランダのワーヘニング大学ではフード・バーリー(Food Valley)といった地域を造り、企業、農家、研究者が共同で研究し、その成果を還元しているので即戦力がある。農業のパート従事者は時給3,300円。日本の基幹農業従事者の場合は200円を割る計算になるという。イスラエルと中国はそれぞれ技術と武器に関心があることから親密になってきている。
又、ドイツの林業の例を紹介。8個の車輪を地形に合わせて動かして木を伐採し、林道が無くても、傾斜も問題なく縦横無尽に動くアームを持ったフォーレストハーベスターを開発しており、用途にわけて能率よく、効率よく動かすシステムも開発。高い技術の乾燥施設や加工場をユニットごとに集落を造るので、長時間保管する倉庫などは無用になり、大幅なコスト削減に成功。ドイツの林業雇用(100万)は、電子産業<80万)、車産業<77万)より多い。小松製作所がヨーロッパでメーカーを買収し始めているという。
オランダでのトマト栽培や、ドイツの木の伐採の映像は衝撃的だった。一房に何十個もの輝くようなトマトが鈴なりに実っている。トレーディングルームのようなところで何枚ものコンピューターパネルを操作する様子など。
T&Tメソッド(酵素を使ってこれまでの慣行技術を覆す、収量、栄養価の高いトマトやイチゴ栽培)を取り入れた県内外や地元農家が大きな成果を出している。植物にとっても不足がちになっている亜鉛やマンガンや必須アミノ酸が増えることによって健康的になり、農薬を使わないで出来る農業という表現は驚きであった。
一次産業としての生命産業である農業林業を中心に、それを健康、教育、環境、医療、食生活などが取り巻く構図がイノベーションであり、そこから新たなGDPが生み出されるだろう。