第73回講話会「児童虐待防止をノルウェーの施策で考えてみよう」H.31.2.24
最近野田市で起きた児童虐待死亡事件が社会問題となっているが15年前に栃木県小山市で3歳4歳の兄弟が父親の虐待により死亡した事件がある。この時、子供虐待防止オレンジリボン運動が発祥。しかし、余り問題化されてこなかった。
ノルウェーでも児童虐待問題はあったが1981年、内閣府に大きな権利権限を持たせた子供の権利を守る子供オンブッドが設立された。ノルウェーではまず女性の権利、男女平等が1970年~80年に主張され始まり、女性の社会進出は世界で最先端を行っている。この延長で子供の権利もしかりで不利な取り扱いで苦しむ者は本人が訴え出ることが出来る社会になっている。子供オンブッドは大変強い権限を持ち、子供を守り育てる社会に発展。1980年代は高度経済成長と共に社会が変わった重要な時代。女性の権利主張と共に出生率は下がるという意識は日本にもあったが対策を取る努力が足りなかった。子供を守る組織化された権限の大きい機関が育っていない。ノルウェーのオンブッドは親より子供を重視。代表者は大臣と検察官を兼ねた存在で大きな権限を持ち、14人のセラピスト、法律家等の専門家で委員は構成され、子供は社会の財産として、個々人の問題を超えた社会の発展を考える。日本の児童相談所は子供より親との関係を重視。体制の制度化が不備で文化として育っていない。
ノルウェーに学ぼうという動きは数年前からあった。「子供の虐待防止シンポジウム~ノルウェーの現状と日本のこれから~」が開催されている。ここで使用された絵本の紹介があった。「パパと怒り鬼~話してごらん、だれかに~作:グロー・ダーレ 絵:スヴァイン‣ニーフース、共訳:大島かおり、青木順子 ひさかたチャイルド出版」ドメスティックバイオレンスを子どもの視点からとらえたノルウェーの絵本で2010年広島国際アニメーションフェスティバルでグランプリを受賞したもの。父親には怒りの鬼が潜んでいて日増しに怖くなった子供が外の木々や鳥、風に勧められて王様にどうしたらよいかと尋ねる手紙を書く。王様はすぐ子供の所にやってきて、その父親と対話しお城に連れて行って一緒に暮らす。いろいろ対話をしていく中で父親は心を入れ替えて行く。子供は父親に会いたいときにはいつでもお城に行けることになる。つまり、王様は強い権利を持つオンブッドであり、父親を更生するという話である。更生出来ない場合は(父親が異常なケースとみなされる場合)子供を里親に預けたり、施設で普通の家庭の状態で第三者が何人かの同じ境遇の子供達と生活させる。社会の財産として守り育てる。
親が子供を育てる権利、日本ではまだ法律にある親の懲戒権、躾の意味、などなど、その解釈の仕方は見方によりいろいろニュアンスがあり難しい問題であるが原点は人間教育にある。ただ、現実に起こる子供の虐待防止の施策としてはまず専門家を備えたしっかりした機関を設置して子供から父親を離し、高い意識を持って更生する努力を続けることだろう。
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