平成27年2月22日(日) 於 日光東照宮 客殿
日光清風塾が企画した今回の講演会は、折しも日光東照宮400年式年大祭の年にあたり、祝賀行事の最初のプログラムとして東照宮のご協力を得ることが出来ました。第一部は池坊保子先生の講演会で演題は「次世代に伝えたい、託したい人間力」、第二部では次女美佳先生によるいけばなのデモンストレーションを実施。懸念していた降雪もなく、寒さも比較的和らいだ中で事業は予定通り実施された。来場者数は当初の予定を上まわり大盛況でした。
保子先生の講演要旨「次世代に伝えたい、託したい人間力」
ロイヤルブルーの気品溢れるスーツ姿で壇上に上がられた先生からの最初のメッセージは「人生の素晴らしさ、それは様々な人との出会いなんです。それは今なんです」と。一期一会。この場所でこの時間に、この時を共有するのは今だけ。一瞬一瞬が大切。この出会いから何を滋養とするか。
400年祭の節目で注目が集まる徳川家康が先生は大好きとおっしゃる。最大の功績は平和な世の中を築き、それを265年も続かせたこと。家康の人生経験から重荷を背負うことが人を造る、勝つことばかり考えず失敗も必要であること、邁進せず家来から教えを乞うたこと。「鳴かずんば、鳴くまで待とうホトトギス。」死んだ後も神となって世の中の平和を守り続けたいという強い意志と求心力は凄い。京都では今年は琳派400年にあたる。家康が本阿弥光悦に芸術村を創設させたことから芸術を生み出す気運が高まり、今日に至っていること。これも家康の功績である。
ライホルド・ニーバーという自由主義神学者をとりあげ、邁進、傲慢が社会の悪を生むこと。冷静さと知恵を持って取捨選択をする能力が必要であること。又、尊敬するケネディー元大統領の記者会見の時のスピーチの中に米沢藩主だった上杉鷹山の話が引用されたことを指摘。鷹山の自助、互助、扶助の精神が彼のスピーチに出て来る「国が自分に何をしてくれるかではなく、自分が国に対して何が出来るかを問え」という名言を吐かせた話もされた。
日本人は力を合わせて一生懸命であり、努力家であり、真面目であり、誠実、公平、勤勉といった要素を備えている。上杉鷹山の思想が流れている。子供の教育に力を注ぎ、藩校は260校、寺子屋も実数は3~5万あったと言われている。日本人の気持ちを引き立てるのは教育しかなかった。まさに自分たちで力を合わせて学校を作ったのである。こうしてみると日本人には立派なDNAが科学、文化、芸術、スポーツ、すべての分野に亘って流れている。
稲盛和夫さんの京都賞の話。技術だけでなく、人を感動させる人が賞の対象。温故知新の意味。古いものを学んでそこから新しいものを創り出すこと。その時代の価値を認めるだけでなく、生き続けて行くこと。これが伝統であり、いけばなの伝統も同じである。生き続けて行くものだけが遺産として認められる。江戸時代は身分の束縛があったがお花の存在が心を癒し、生きる支えを得て今日に至っている。感謝の心、自然の命に新たな命を与える。川端康は「美しい日本の私」の中で、自然を愛で、新しい命を注ぎこむ。美しい自然に抱かれている日本人の感性の豊かさ、日本人の強靭な意志とやさしさを説いている。OECDによる生徒の学習到達度調査PISAを見ると日本はトップクラス。地域的にみると、上海、シンガポール、香港が断突であるが、国全体としてはレベルが高い。この素晴らしい伝統のある国で学力もある日本の子供達には身に付けた学力を社会や人類の幸せに結びつけて欲しい。学校教育に加えて大人がそれを教えていかなければならない。読書は判断力、推察力を構築する。大事なことはそのことを次世代に伝えることがわたしたちの役割だと締め括られた。不平、不満の前に、何が出来るかと思う子供達を育てたい。
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