
そんな生活が二年半続いた。その間、わたしは一度も外に出たことが無い。窓辺から見るマンハッタンは、時にはビル風が強くて冬などは本当に寒そうだった。暑い夏もあれば、日差しがあって気持ちよさそうな季節もあっただろうが、ずっと中で籠の猫として言ってみれば優雅に過ごしたものである。一度だけ、おとうさんもおかあさんも居ない時が二週間も続いたことがある。あのバカンスという休暇をとってどこかへ行ってしまった時だ。でも、それはそれでわたしのことを心配して、同じビルに住む日本人のお友達が、毎日、水と食料の追加に訪れてくれた。トイレも掃除してくれた。彼女に顔を出して挨拶しなかったことを、今では反省するばかりであるが、あの時は密かに感謝していたものである。わたしはいつも守られているということを感じて安心していた時である。
わたしにとってのニューヨーク生活は、日中はリビングの窓辺からマンハッタンの三十六丁目と三十七丁目間のセカンドアベニューを眺めるだけのものであったが、夜はいろいろなお客様が来て、賑やかな話し声に圧倒されたものである。そんな時は別室で静かに時を送っていたものである。
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