三毛子 (16)
その頃、京都の大学にいた上のおねえさんが卒業して東京の家に戻ってきた。下のおねえさんも合流して多摩の家はにぎやかになってきていた。おにいさんも六月にアメリカの高校を卒業して帰ってきたので、家族全員そろったところだった。上のおねえさんはこれからジョブハンティングに入るし、お兄さんは日本の大学を受験する。こんな時に、おとうさんとおかあさんは又海外で仕事をすることになり河合家は落ち着かない。おねえさんもお兄さんも日本に残る。わたしはどうするの?一大事である。ブルネイに連れて行くとか行かないとか、あれこれ調べて迷っていたみたいだが、結局、連れて行かれないことになった。何でも、ブルネイというところはイギリスの統治下にあったので、動物の検疫が厳しくて、検疫所に三か月も六か月もいなくてはいけないんだって。そんなことしたら、ミーちゃんは死んでしまうというのがみんなの意見だった。
おねえさんやお兄さんが「日本に置いていったら?」と言ってくれた時は、嬉しいような悲しいような。おかあさんの側にいられなくなるのが何とも悲しい。でもわからない所に行って肩身の狭い思いをするより、自由に、我が家の主でいられる方が私には向いている。みんなはわたしの意見は聞かなかったが、とうとうわたしは日本に置いて行かれる結論になった。おねえさんやお兄さんが一緒なら平気だった。餌をもらえて、水もあって、トイレもきれにしてくれる人がいればわたしは何とかやっていける。おかあさんもさびしいかもしれないけど、わたしは大丈夫だから。そのような気持ちを伝えたかった。
別れては会い、又別れる。河合家はずっとこれを繰り返して行くのだろうか。ずっと一緒にいられたらいいのに。でも、おとうさんが外交官なのだからお国のための仕事をずっとやっていかなくてはいけない。河合家より先に、お国がある。おねえさんやおにいさんはつらいのに、大丈夫だからと言って頑張っているのが本当にけなげである。
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