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2012年5月8日火曜日

三毛子 (21)

三毛子 (21)

こんな人生が一年続いた。手紙がくるわけでもなく、どんな様子なのかも全然わからないでひたすらマイペースの日々の連続だった。でも、時は誰にコントロールされることもなく、一人で、こつこつと経っていく。わたしはその時の刻みに身をゆだねるだけ。外から聞こえる音に耳をそばだてながらも、何もしない。知らない人が来れば、身を低くして、飛びかかる態勢にかまえるだけ。それだけで毎日はどんどん過ぎて行った。運動不足になった気もする。部屋の中で走り回るチャンスがないままにわたしはメタボになっていった。テレビは置いてあるが、つけることが出来ないので、ニュースをフォローすることもなく、とにかく、寝て食べてだけの生活になっていった。

このころだったと思う。皮膚に湿疹が出来て、体調がかんばしくなくなったことがあった。おねえさんがいち早く気が付いて、わたしをあのニューヨークに行った時に入れられていた籠に入れ、獣医さんの所に連れて行ってくれた。蒸し暑かった時の後遺症かも知れない。何だか原因不明のまま注射された。蚤とも違って、もしかしたら、ストレスからかもなんて言われたらしい。精神力が強いと思っていたが、それもあたっている気がした。毎日一人で耳をそばだてて、足音だけを緊張して聞くことがいかに重圧感をもたらすことか。よくもちこたえたとしか言いようがない。

そして今度こそおとうさんとおかあさんは日本に帰国してしばらくは一緒の生活が出来るようになった。おとうさんは勿論だが、おかあさんも仕事を再開した。前にやっていた仕事に復帰したので、要領はわかっている。おとうさんは都心に行くので、自転車で駅まで行って、あとは電車だった。おかあさんは八王子の方のセンターが仕事の基点だったので、家から車で通った。変化のある生活になって、わたしも寝てばかりはいられなくなった。家の中の物音、電気がついたり、テレビがついたり、洗濯機の音や、台所の音、いろいろ賑やかな音と動きが、今までのわたしのペースを狂わせて行った。

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