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2013年10月7日月曜日

日光清風塾 第27回塾長講話会

平成25年10月6日 第27回塾長講話会の要旨

そもそも憲法の話というのは難題で敬遠されがちであるが、やはり関心のある人達からは次々と問題提起がなされ、それに沿って講話は進められた。
 現憲法の内容に賛成か不賛成かは別として、アメリカ占領軍に押し付けられたものであることに変わりはない。(特に、憲法前文は翻訳調の変な日本語であり、その国際環境についての認識は非現実的。)明治憲法の改正手続きに従い、帝国議会の議決を経て天皇が公布したものであるが、占領下においてGHQが強制した憲法改正に反対することは出来なかった。アフガニスタンやイラク等米軍駐留下での憲法改正も同じである。GHQから指示されて日本政府は独自の新憲法草案策定に入ったが出来上がる前にリーク。GHQはこれが基本的に明治憲法と変わりないと受け止め、GHQ自身で草案を策定することにした。
 日本案の最大の問題は天皇の統治権を明記していたこと。連合国の一部、特にソ連、オーストラリアは天皇の戦争責任を追及し、天皇を廃すべし、と主張していたが、マッカーサーは円滑な日本統治のため、何とか天皇を残したいと考えていた。そこでGHQの草案は①天皇は日本国のシンボルである、として天皇を残そうとした。そのかわり、反対国を説得するため、②戦争放棄条項(第九条)を設けた。第九条の当初案は、自衛のための軍事力も持ってはならないとされていたが、これでは日本の生存権も否定される、と日本政府は強く反対し、マッカーサーもこれを認め最終的には削除された。
 次に、集団的自衛権について議論。国連憲章ではいかなる国も個別的、集団的自衛権を有すると規定されている。日本が、個別的のみならず集団的自衛権も有していることは、サンフランシスコ講和条約、日米安保条約のみならず日ソ共同宣言でも規定されている。しかしながら、これまで日本政府は憲法第九条の解釈上、集団的自衛権は認められていないとの立場をとって来た。ところが、最近領土問題を巡って中国などから軍事的圧力が強まって来ているので、米軍との連携を強化することがますます重要になって来ており、憲法解釈を変更すべきであるとの意見が自民党内部で強まって来ている。他方、公明党は慎重姿勢を取り続けており、自民党も解釈変更を急がないようである。
 自民党は憲法第九十六条(改正条項)の改正を優先させたい考え。同条では国会が発議して国民投票で決めることになっている。国会が発議するには、両議院でそれぞれの総議員(出席議員ではない)の2/3以上の賛成が必要とされているが、これが難しいので、1/2以上に改正すべきというのが自民党の考え。ドイツ、アメリカなども議会での2/3以上の賛成が必要とされているが、国民投票は無く、憲法改正を何回もやっている。日本のように国民投票がある国の殆ど全てが、議会の発議は1/2以上の賛成によると規定している。
 ねじれ国会を避けるために一院制にすべきという意見もある。GHQは貴族院を廃止して一院制にすべしと要求したが、両院によるバランスを取るために参議院を設置した経緯がある。個の改正につき外圧がかかることはなく、国民の判断の問題である。
 社会の規範は、価値観の変化や国際環境の変化に応じて変更されるべきである。それは社会が発展し続けるために必要なことである。他方、現憲法が戦後のわが国の平和、安定と経済発展をもたらして来たとも見られ、憲法改正については国民レベルで大いに議論が行われるべきである。このテーマについては将来、この講話会で改めて取り上げることにしたいとして、今回の議論は終わった。
 
 


  

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