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2022年12月7日水曜日

第103回日光清風塾講話会 12月4日(日)

 12月4日(日)日光清風塾第103回講話会

11月は多忙なスケジュールがあるため、11月の講話会は本来お休み月となる12月の第一日曜日に延期。そして、講師は奥日光の洛山晃 小島屋の主人、小島喜美男様郷土史研究家にお願いした。来春にはG7の分科会「女性活躍担当大臣会合」が奥日光で開かれる。それに関連して10月の第102回目には塾長がそれをテーマに講話した。今回はその延長上を視野に、明治4年まで女人禁制であった奥日光における人物像を年代順にお話いただいた。奥日光には随分秘めた人物がいることが見えてきたお話であった。中でも、今回ドイツ人女医の存在については、事前に資料を入手していたので、私は理解していたが、講話会でもこの女性の話をもっとしていただきたかったのが本音である。小島氏が実在した彼女をモデルに劇シナリオを創作されているので、ここにその私の読後感を書いておこう。そして今回の講話でのお話は時系列に図式化しておきたいと思う。

「いのちのゆくえ」 <なつかしの中禅寺>     作・構成 小島喜美男           

 昭和の戦中そして戦後               令和三年十月

    やまの湖水のほとり

     愛犬二匹をいつくしんだ

      ドイツ人女医      

 タイトルに惹かれて一気に読んだ。 

史実に基づいたストーリーが昭和30年当時を現実の舞台に設定し、そこから145年前に遡っての史実を再現しながら進む。中心人物であるドイツ人女性医師ベッカの物語が、そのコミュニティーの中での人物像から彼女の哲学、人生論が深堀りされていき、当時の奥日光の様子が巧みに再現されている。とくに12頁の中禅寺役僧菅原裕景とベッカ女医との宗教論のやりとりは、中禅寺湖の風景を背景に、強く、かつ、情緒的に美しい流れとなって響いてくる。日本人僧侶の自然観、浄土観念、静寂の中の孤独な観念の中で、悟りを激しく追求する心の葛藤をベッカは良く理解している。西洋の一信教であるキリスト教にも東洋に近い思いがある。中禅寺の自然をこよなく愛したドイツ人のベッカ女医は最後には命は不滅だと言い切っている。

 アック(アキレス)とヘクター(ヘエクトル)という二匹の愛犬との密な生活の様子が巧みに描かれていて、それだけに、敗戦後に母国に帰らざるを得なかった時の愛犬との悲劇的別れは胸を打たれる。彼女の願いは二匹の愛犬の間に葬られて死後の世界を一緒に歩むことだったという。政治的に、彼女にはスパイ容疑もあったようだが、14年間、戦中と戦後を全身全霊を注いで中禅寺を愛し、女医として地元民を助け、優しいと慕われながら生きた一外国人の物語。彼女の心は中禅寺のどこかに漂って生きているような気がしてならない。

  シナリオ作品には当時の人物、建物の写真のみならず、沢山の浄土の世界を思わせるような、神秘的で美しい中禅寺界隈の写真が載せられている。これらも小島氏が実際に撮られたものであろう。実に美しい中禅寺風景である。作者自身がイメージ配役をリストアップされていることから、このシナリオ作品が本当の舞台で再現されることを願ってやまない。

                  107日      慶子の感想

 



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