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2010年9月19日日曜日

第四回世界遺産大学 「日光の社寺 自然と神々」という世界遺産劇場実行委員会と下野新聞社主催のイベントに参加してきた。17日には二荒山神社境内で浅野温子さんによる古事記からの読み語りが夜の幻想的な演出でなされ、続いて歌舞伎「連獅子」奉納があったようだが、私は18日に日光総合会館で行われた彼女の「天の石屋戸」の話の読み語り基調公演と彼女を含め、東照宮奥田権宮司、二荒山神社中麻権宮司、輪王寺鈴木執事総務部長、それに福田富一知事と5人のパネリストと下野新聞黒内論説部門主筆がコーディネーターとなってのパネルディスカッションに出席してきた。パネリスト達がそれぞれの思いを予めまとめてきた原稿を見ながら、理路整然と述べ、全体的に予定通り2時間でまとめあげられたのには洗練された印象を持った。
●浅野さんのキーワードは「語り伝える」で忘れ去ろうとしている古事記の話を7年前からやっていて二荒山神社での公演が60回目にあたるそうである。自然と人間の融合を崇め、古事記のテーマが家族愛であることを強調。日光山の信仰がまさに大自然の中での家族愛であることに気付かされる。
●浅野さんに最初から同行して古事記からシナリオを作成している脚本家阿村礼子さんのキーワードは「ものがたり」で、古事記の中に日本人の原点があると説く。
●福田知事のキーワードは「共生」。過去、現在、未来が共に生きていることを主張。世界遺産の意義を説き、行政の立場から実際の資金は出ないが、修復作業の縁の下の力もち的立場で言葉や文化の違いを乗り越えて感動してもらえるよう、観光基盤の充実を計り、自然と神々が一体化し聖地、すべてが複合した霊地の保存管理に協力していきたいと述べた。
●奥田東照宮権宮司のキーワードは「調和」。神域すべてがパワースポットなので55棟もの社が建てられている。家康の遺言により、彼を神として日光に祭られてから2015年には400年祭りを迎えるため、すでにいろいろなプロジェクトを立てている。彼の言う江戸幕府の安泰は日本の安泰であるという壮大な思いが調和に繋がっているということ。
●中麻二荒山権宮司のキーワードは「感謝」。大自然の恵みと神々の存在。そして先人の真心と知恵に感謝である。(安土桃山時代の30年間は空白であったという)男体山を開山して以来の宝物がしっかり保存されていて、信仰の変遷がよくわかる。
●鈴木輪王寺執事のキーワードは「今」でこの瞬間がすべてであるということ。全てのものに価値があり、それらを大事に一日一日を生活することと捉えるべき。二社一寺などと言うべきではなく、むしろ日光山として全体的に日光信仰と理解すべきである。神仏集合、複数の神々の信仰であり、神と仏の調和の中での人々の生活の営みが世界遺産として認められたのだと思う。無数の人々の生活が背景にあるということ。(ピラミッドや万里の長城と異なる点)鈴木執事は大変ユーモアな語り口で、親しみやすさを感じさせられた。さらに今やるべきこと、それは布教活動である。信仰心がなければこの世界遺産は無くなってしまうから。
改めて日光信仰のテーマを考える良い機会となった。

19日には東照宮五重塔前での「結界譚」地鳴りする上妻の三味に麿赤児が異形の群舞を繰り広げる大公演を観劇することになっている。

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