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2012年4月21日土曜日

三毛子(14)

三毛子(14) 

  サンフランシスコではおとうさんの友人のところに一泊、あとの二泊はあのローズマリーのアパートだった。ローズマリーとご主人のディックは毎年、夏はシスコにいた。ディックがスタンフォードで研究チームに入って研究を続けている。冬はアマーストの大学で教え、夏は研究生活をしながらオーケストラやダンスを楽しむ。猫にはまねの出来ない、スケールの大きな二重生活を送っている人達である。

  彼らのアパートにいる時、わたしはよそ者なので、身を低くして殆どベッドの下で過ごした。みんなは、日中は外に出かけていなかったので、部屋中をパトロールしながら沢山運動をしておいた。部屋がきれいにしてあるので、よごさないように気を遣った。どこに行っても、わたしのトイレはおかあさんが用意してくれるので本当に安心だった。それにしてもあの人達は毎日どこを歩いてくるのだろう。車で出かけて、ナッパヴァーリとか言っていたけど、ワインを買ってきたりしていた。わたしには、おみやげはないが、無事に帰ってくるとやはりホッとし、安心して寝ることが出来た。今気が付いたが、ほかに猫はいないのだろうか。アメリカにきて、一度も他の猫を見たことが無い。わたしは本当は天涯孤独な猫なのである。でも、淋しいと思ったことは無い。強い猫だと自分でも思う。

 サンフランシスコから成田までは長かった。バスケットの中に入れられたまま、無駄なボクシングをやり続けた。おとうさんはそうでもなかったが、おかあさんは周りの人に気をつかって、わたしを静かにさせようとするがこれも無駄なエネルギーの消耗となった。我慢して下さい。これだけは猫のバカなところで、自由を奪われると無駄な要求と知りつつもマイペースで要求し続けてしまう。時間が解決してくれるということがわからないのがつらいところである。

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